ROCKMANX 〜紅いハンター〜

ブレイドさん作

第4章 悲しみ、そして・・・

 

ここは、暗き闇の中。
どこまでも続き、かつすぐそこに出口がある、矛盾した場所。
その闇の中に、今まさに目覚めんばかりとしている、一つの精神があった。
紅き体。
風になびく金の髪の毛。
その手に何か握られている。
その者は横たわっている。
夢でも醒めるのを待っているのだろうか。
そして、その者の目の前に、何者かが現れた。
と同時に、その者は目覚め、起きあがった。
「初めまして、とでも言うべきかな、ゼロ?」
「お前は・・・・誰だ!!!」
紅き体の者―「ゼロ」は、手にしていた物を構えた。それはまさしく、ゼロの武器―「ゼットセイバー」であった。
「オレが誰だって?オレは・・・お前だ」
その者はよく見ると、ゼロと同じ姿形をしているではないか。違う点は、紫色の体と、灰色の髪の毛だけである。
「どういう事だ?」
「まぁ、そんなに結論に急ぐな。ゆっくり話でもしようじゃないか」
「話す事など・・・無い!!!!」
ゼロはそう言い、そのゼロにゼットセイバーを持って斬りかかった。
だが、そのゼロにセイバーが当る事は無かった。気付くと、そのゼロはゼロの後ろに居た。
「甘いな」
そういって、そのゼロは、ゼロを思い切り殴りつけた。
「ぐっ・・・・・!」
ゼロは、体制を崩した。
「ゼロ。キサマにエックスと再び会う資格があるかどうか試してやろう。地獄を見て、なおかつエックスに会いたいと言うのなら会うがいい。だが、今のキサマにこの地獄を越える事が出来るかな?」
「何・・・だと・・・!!?」
「この場が・・・キサマの体、そして精神の墓場だ!!!さぁ、出来るものならこの地獄を越えて見せよ!!!!ハハハハハハハハハ・・・・!!!!!」
「待てっ・・・!!」
そして、その紫色のゼロは、闇へと消えていった。
そして、その闇の中から声が聞こえた。
「最初に、この地獄を見せてやろう!!!耐えられるかな?」
そう言うと、声は途切れた。

そして、向こうから、何者かが歩いてきた。
「久しぶりだな、ゼロ!!!」
「お前は・・・・・カーネル!!!」
歩いてきた者は、かつて「レプリフォース大戦」で戦死したはずのカーネルであった。
そう、紫色の体を除いては。
「ゼロ・・・何故だ!!!何故我らをイレギュラーと決め付けた!!!見損なったぞ、ゼロ!!!!!」
「見損なったのはこっちだ、カーネル!!何故クーデターを止めなかった!!」
「今更になって、こんな話に意味など無い・・・・私は、お前と決着をつけるため、あの世から戻ってきたのだ!!!」
「なら、今度こそケリをつけてやる!!!!行くぞ、カーネル!!!」
こうして、地獄は幕を明けた。


カーネルのビームサーベルとゼロのゼットセイバーが激しくぶつかり合う。
過去の幻影と戦う・・・これこそまさに「地獄」であった。
だが、その地獄も、ゼロにとっては何の事は無かった。
「カーネル・・・確かにすまないと思っている・・・だが・・・誰かがレプリフォースを止めなければならなかったんだ・・・」
そう言い放ち、ゼロはカーネルの衝撃波を避け、
「はっ!!ふっ!!!はっ!!!」
ゼロは、目にも止まらぬ勢いで3段連続斬りを繰り出した。
「くっ・・・・!!」
連続斬りをもろに受けたカーネルは、その場に膝をついた。
「見事だ・・・・私の過去を越えられるとは・・・・だが・・・・次はそうも行かんぞ・・・・ぐああああ!!!」
そして、カーネルは闇の中へ消えた。
「見事だ、ゼロ!!だがしかし、いくら冷静のお前でも、こればかりは越えられまい!!!フハハハハハ!!!!」
そう言って、その声は再び途切れた。

「ゼ・・・ロ・・・」
「アイリス!?アイリスなのか!?」
そこに居たのは、カーネルの妹―アイリスであった。
だが、体は紫になっていた。
「ゼロ・・・・貴方は一体、何のために戦っているの・・・?」
「どういう事だ!!」
「覚えていないのなら・・・思い出させてあげましょう・・・・」
と、紫色のアイリスが言った。
と同時に、ゼロの頭の中に何かが流れ込んできた。
「っ!!これは!!?」





とある部屋。
暗い部屋。
そこに差し込む、一筋の光。
その光の先に、横たわっているアイリス。
向こうから、何者かの走る足音が聞こえてくる。
「アイリス!!アイリス!!」
「ゼ・・・ロ・・・」
「アイリス!!しっかりしろ!!」
アイリスに駆け寄るゼロ。
ゼロの呼びかけに、静かに目を覚ますアイリス。
アイリスは、静かに口を開いた。
「お願い・・・もう・・・レプリフォースに手を出さないで・・・一緒に・・・レプリロイドだけの世界で暮らしましょう・・・」
「アイリス、レプリロイドだけの世界なんて幻だ!!」
「そうよね・・・でも・・・信じたかった・・・いつか・・・レプリロイドだけの世界で・・・あなたと・・・」
そう言って、アイリスはゼロに手を差し伸べた。
その手を両手で受けるゼロ。
「アイリス・・・」
アイリスは、笑顔を浮かべた。
だが、それがアイリスの最後だった。
目をつぶり、アイリスは静かに息を引き取った。
「アイリス!?アイリス!!」
ゼロは呼びかけた。
「アイリス!?アイリス!!アイリス!!」
ゼロは、アイリスの肩を持ち、何度も揺さぶった。
だが、アイリスは、もう戻って来る事は無かった。
「アイリス・・・」
ゼロは、アイリスを抱きかかえ、叫んだ。
「うああああああーーーー!!!!!!オレは、オレは、一体何のために、戦っているんだぁぁぁーーーーーー!!!!!!!」
ゼロの叫びが、悲しくもその部屋に響き渡る・・・・・・・


―『これが・・・本当のオレなのか・・・?本当のオレって奴なのか・・・?』
レプリフォースの影に隠れていたシグマを倒し、最終兵器を壊し、任務が終わったあと、ゼロは戦闘機に乗って脱出し、その中で考えていた。

―『結局オレは、誰一人として助けられなかった・・・アイリス・・・』
ゼロの頭の中に、アイリスとの思い出が蘇る―

―南洋の島―『ラグズランド』で、共に協力してシグマの陰謀を止めた日々。
―ゼロに対して、無邪気で子供みたいな笑顔を振り撒いていたアイリス。
―兄・カーネルとゼロの戦いを、必死に止めようとしたアイリス。
―満面の笑みで、静かに息を引き取ったアイリス。


―『アイリス・・・結局・・・オレ達レプリロイドは・・・皆、イレギュラーなのか・・・?』


「アイリス・・・・・」
ゼロは、悲しみに包まれた。
何故、自分は戦っているのか。
自分は、何のために戦っているのか。
「ゼロ・・・あなたに本当の意味が理解できるかしら・・・?」
目の前に居る紫色のアイリスは、そう述べた。
「さあ・・・過去を越えてみなさい・・・ゼロ・・・!!」
そう言うと、アイリスは手にしていた紫色の水晶を自分に取り込み、巨大なアーマーに身を包んだ。
「オレは・・・オレは・・・」
そして、悲しみを越えるための戦いが始まった。



協力無比なレーザー攻撃。浮遊機雷。この2つの攻撃を同時に仕掛けてくるアイリス。迷いながらも、セイバーを振るゼロ。
「オレは・・・一体・・・何のために・・・だが・・・」
ゼロは、ある程度決心したのであろうか、アイリスに向かっていった。
「誰かが・・・レプリフォースを止めなければ、ならなかったんだ・・・すまん・・・許してくれ・・・アイリス・・・!」
ゼロは、悲しみに包まれながらも、そのアイリスに向かい、渾身の力を込め、
「『断地炎』!!」
ゼロは飛び上がり、セイバーにマグマエネルギーを込め、串刺し状に斬った。
そのアイリスは、音もなく崩れ、そして消滅した。
「アイリス・・・安らかに眠ってくれ・・・」


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