ロックマンエグゼ小説

ビスケット・EXEさん作

第9話 信頼の絆

 

霧に囲まれた森を越え、ロックマンはやっと都会の街並が見えるところまでたどり着いた。森を越えると奇妙なほどに昼ががらっと夜に変わった。目の前にはピカピカ光る都会のネオン・・・。
「ようこそ永夜の町、フォルダシティーへ・・・。」
フォルダシティーの入り口まで来ると妙に似合わないタキシードを着たナビが軽く会釈し、こちらに向かってきた。
「フォルダシティーはたいへん広いのでこのマップをご覧くださいませ・・。」
ナビはマップをわたすと明るいネオンの中へ消えていった・・・。
「どれどれ・・・」
熱斗はPETから送られてきた画像を見る。
「今いるところは・・・『西ゲート入り口』かぁ・・・・。」
とりあえずロックマンは行くあてもないのでここから一番近い『西ゲート広場』へ向かうことにした。
「色々なものが売ってるね。あっ、あそこに何かやっている人がいるよ!」
ロックマンは『リサイクルショップ』と書いてある店の壁に寄りかかっている、現代世界で言うと『絵描き屋』のところへ足を急がせた・・・。
「どんな絵を売ってるんですか?」
ロックマンがそう尋ねると・・・・ナビは・・。
「・・・・・・『ウィルス』よ・・・・・」
絵描き屋ナビの後ろの絵には今までロックマンが見たことのあるナビがびっしり綺麗にデッサンされていた。
「あっ、申し遅れたような・・・。私の名前はロロ。絶対に覚えてね♪」
ロックマンに筆を向け、ビシッとはなすとまたもくもくと絵を書き始めた。
「ロロさん、ちょっと聞きたいことがあるような・・・。」
「何!?何々!?早く言ってよぉ!」
意味もなく興奮しているロロをよそにロックマンはゆっくりと話を始めた。
「フリーズマンって方見ませんでしたか?」
「フリーズ?フリーズフリーズフリーズ???ってか知らない。なんだ、つまらない話、もっといい質問ないのかしら?」
「そ、そんなこといわれても・・・・」
ロックマンは当たり前に困っている。そこへ・・・
「ん?ロックマンさんじゃないですか?」
後ろを振り向くと自分の探し人、フリーズがいた。
「いやぁ、お久しぶりですね。どうしたんですか?こんな所に来て・・・」
「じ、実はですね・・・」
ロックマンが次の言葉を言おうとしたときにフリーズの後ろから声が上がった。
「・・・フリーズさんだよな?お久しぶりですな。」
フリーズさんの後ろには昔、『ロックマンズインフォメーション』で話したことはなかったが見たことはある黒アーマーのナビがいた。
「最近ね〜、ウィルス排除に力をいれてなぁ。これでも俺様は『隊長』という身分だからな!」
「そうなんですか。で、闇ゼロさんの後ろにいる方は・・・?」
フリーズがそう言うと闇ゼロの後ろからもう一体、ナビが姿をあらわした。
「いやぁ・・・こ、こんにちは。闇の使者のシュラというものです・・・」
「闇の使者?」
聞きなれない言葉に思わずロックマンは無意識に声を発していた。
「あぁ、闇の使者ってのはな・・・『闇』の伝言などをある奴に伝えるって言う仕事だ。」
「おい!闇の覇王、『デスゲイズ』様をある奴扱いにするな!」
「デスゲイズ?っていえば・・・・」
今度はフリーズが声を発した。
「以前、表世界を侵略しようとした悪の元凶みたいな奴じゃないでしたっけ?」
「そうです。『デスゲイズ』様はこの私にさまざまなことを・・・・・・」
マシンガンのような速さでペラペラ喋っていくシュラにゼロは「ち、またか・・・」、フリーズは「早くて聞き取れないです。」といった。そんな声にも気にせずシュラは話を続けていた。
「・・・・して、全ての闇を作り出したのがこの『オーディーン』様といわれていますが、私はなにせこの・・・・・」
もはや誰も聞いていない話を黙々と続けるシュラをよそにロックマンとフリーズはシュラと距離をおいてさっき言いそびれた話の続きを始めた。
「で、ロックさんがフリーズさんが情報を握っているといわれて尋ねたのですが・・・」
「そうだねぇ〜、風の噂によるとこのフォルダシティーにあるって言われて僕も来たのですが一向に情報は得られなくて・・・」
「このフォルダシティーに!?」
「はい、そうなんです。二手に分かれて探しましょうか・・。」
そんな会話を続けているうちに二人の背後から異様な殺気がこみ上げてきた。
「・・・・私も入れてぇ・・・・・・・。」
殺気の正体はズバリ、ロロ。周りからは不思議なオーラがまとっている。どうやってフォローすれば良いかもわからずなにか言い訳しようとしたロックマン達。しかもまだシュラは一人で語っている。そのとき!
「う、うわぁぁぁ!ウィルスの大群がき、来たぞぉぉ!!!」
北の方角からナビが走りながらこっちへ向かってくる。その後ろには大量のウィルスがナビの後を追ってこちらに向かってきた。
「ロックマンさん、分かってますね?」
「もちろん!」
ロックマンはバスターをウィルスに向け発射した。
「はぁぁぁ・・・!!」
フリーズは手に力を込め、青色の物体を放出した。しかし、これだけロックマンとフリーズが応戦してもウィルスの大群は着々とこちらへ向かってくる。そのうちの一体のウィルスがロックマンに襲いかかってきた。
「うわぁぁぁ!」
「ロック〜!!!」
ロックマンが閉じていた目をうっすらと開けた。襲い掛かったウィルスを阻んでいたのは同じウィルスの『ハンドボルズ』だった・・・。
「ほえ?」
思わずロックマンは口をぽかんと開ける。
「これが私の能力。その名も『ウィルスアート』よ。」
「ウ、ウィルスアート??」
ロロの能力−『ウィルスアート』は自分専用のテキストにウィルスの絵を書き込むとそのウィルスが絵から飛び出してくる。というものだった。
「でも『ハンドボルズ』出して正解だったわ。『ハンドボルズ』のガードは強力だから・・・。」
おもわずロックマンはその能力に拍子抜けしてしまった。
「さぁ、今度はもっと面白いものを見せてあげるわ!」
そういってまたテキストに絵を書き始めた・・・。
「出来上がり!行くわよ〜!ウィルスアート!『スウォーディン』!」
するとテキストからむくむくと『スウォーディン』が顔を出した。
「もう一発!ウィルスアート!『コピー&ペースター』!!」
そう叫ぶと『スウォーディン』の体が虹色にひかり、次の瞬間『スウォーディン』がこれでもかというくらいに増えていた。その数ざっと50体を超えている。
「さてさて、あなた達はなんとかチップでも探してなさい。ここは私がやるから・・・」
「ちょっと待て。俺を忘れてもらっちゃ困るぜ?」
いままで何もじゃベらずただもくもくと話を聞いていた闇ゼロが口を開いた。
「さて、ここはロロに任せてっと・・・。俺は南に出てきたウィルスを片付けるぜ!」
闇ゼロはいさぎよく南ゲートへ向かおうとしたが・・・。
「おっと忘れもん。・・・おい、シュラ行くぞ。」
「おっ?!わかったわかった・・・。」
いまだに演説を続けていたシュラは闇ゼロの声に我に戻った。
「さて・・・・私達は・・・とりあえず、東ゲートへ行きましょか?」
フリーズの言った言葉にこくっとうなずくとロックマン達は東ゲートへと足を急がせた・・・。
 
−南ゲート−
「ふぅ、次から次へとらちがあかねぇぜ。」
「まったくだ。」
さっきから闇ゼロは剣を振り回しているが一向に減る気配が見えない。それどころか逆に増えているようにも見える。
「の前になんでこんなところに大群が来たのか?」
「ンなこと知るかよ!」
次々とウィルスたちをなぎ倒しながらぶっきらぼうに答える。
「ん?あれはウィルスの親玉じゃないか?」
シュラを指す先にはなにやらカブトムシっぽいような奴が見える。シュラは持ち前の『勘』で奴を親玉と決めた。闇ゼロは「わかった」とうなずくとまっすぐに親玉?に向かっていった。
「お前か!このザコどもの親玉は?」
「いかにも・・・。私の名前は『グラビディー・ビートブード』という。ある方の命を受けて異界から参った・・・。」
「はん!カブトムシがなに偉そうなこと言ってんだよ!!」
そういうなり闇ゼロはビートブートに向かって切りつけた。
「ふん、『グラビディー・ホール』!」
目の前に黒い物体があらわれたかと思うと闇ゼロはだんだんその物体に引き込まれていった・・。
「な、なに〜?!」
「ふっふっふ。私の能力は『グラビディー』。」
「『グラビディー』・・・。重力か・・・。」
シュラが意味ありげに呟く。
「その通り!誰も私の重力に逃れられるものは居ないのだ!」
闇ゼロは「はぁ・・・」とため息をつくと引き込まれていく足を踏ん張り『グラビディー・ホール』を一つ残らず切りつけた。案の定、全てのホールはこなごなに砕かれ消滅した。
「な、なんと!私の『グラビディー・ホール』が!!」
「ま、大ボスにしては良くやったと思うぜ。」
そう言い放つと闇ゼロは己の剣−ゼットセーバーに力を込める。
「冥界の王魔人ガルドゥスよ・・・今こそ我が剣に宿りて敵を滅せよ!!」
セイバーが紫色に光る。闇ゼロは紫色に満ちたセイバーを天高くかかげた。
「オ・メ・ガ・バースト!!!」
途端、セイバーから衝撃波が回りの町おも巻き込む。次の瞬間、ビートブードは跡形もなく消えていた。するとあれほどいたウィルスの大群も一瞬にして消滅した。
「さて、俺達は、あいつらの手伝いでもしに行くかね。」
「はて?「あいつら」・・・とは?」
「ばーか、決まってんだろ!ロックマンとか言う奴のことだよ!」
いままで語りに浸っていたので何が何だがわからないシュラであった・・・。
 
−西ゲート−
「ウィルスアート♪・・・・『メテファイア』!」
ロロの前にメテファイアが現れるとロロはさっきと同じ方法で『コピー&ペースター』を発動させ、メテファイアを複数にした。
「はいはい!隕石ちゃん!『メテオ9』よぉ〜!」
ロロの命令にこくっとうなずくと空から無数の隕石が敵にめがけて降ってきた。無論、全ての隕石がウィルスにヒットした。しかし、やはりウィルスは一向に減らない。
「はぁ・・・次・・・・ウィルスアート!・・・」
「くっ、・・・・・ウィ、ウィルスアート・・・!」
次第に疲れが見えるロロだったがついにウィルスに痛い一撃を受けてしまった。
「いっ・・・ったぁ・・・・。」
これにひるんでしまったロロに次々ウィルスが襲い掛かる。もう駄目かと思ったとき、一筋の風が吹いた・・・。その瞬間、ロロに襲い掛かったナビはほとんど消滅しかけていた・・・。
「はい?!」
突然の出来事にロロは驚きを隠せない。しかし、それをやったと思われる人物が顔を出した。
「あ、あなたは・・・?!」
「大丈夫だね?良かった。僕の名前は『シューツマン』。風の戦士だ。」
風の戦士?とロロは聞こうとしたが次のウィルスが襲ってきたので質問は後にしようと控えた。
「ウィルスか・・・。まぁ、良いさ。」
そういうとシューツマンは空高く飛び空中から衝撃波をいくつか発射した。
「『シューツクラッカー』!」
衝撃波はウィルスにぶつかると周りに分散し、さらに多くのウィルスを巻き込んでいった。しばらくたつとウィルス達は一匹残らず消滅していた。
「す、凄い・・・・!」
あまりの強さにびっくりするロロにシューツモンは優しく言った。
「さっ、行きなさい。後から来るウィルスは僕が片付けておくから・・・。」
このままここにいると自分は迷惑だと思いロロもシューツマンの指示に従い、ロックマン達のところへ行くとした。

−東ゲート−
「しかし、東ゲートまで来てみたもののどこを探せば良いのかさっぱりですね・・・。」
フリーズは困ったようにロックマンに言う。
「ですよね、しらみつぶしに探してみましょう!」
「そうですね。しかし、こちらにはウィルスは一匹もいませんね・・・。」
さきほどからロックマンも気になっていた。東ゲートを越える前はウィルスが邪魔をしていたのにいざはいると人っ子一人すらいない。いやここはナビッ子一人というべきか・・・?
「不気味なほど静かですよね・・・。」
「まぁ、居ないだけ良いじゃないですか。あっ、私はこちらを調べますのでロックマンさんはそちらの方を調べてください。」
二人で同じところを探すより分かれて探す方が効率がいいと思ったのかフリーズとロックマンはお互い別々の場所を探すことにした。
「うーん、セブンスチップって一体どんなふうに保管されてるんだろ・・・。」
ロックマンは適当にものを蹴散らしながら進んでいく。確かにロックマンの持っているセブンスチップは全て貰った物だ。どこで手に入れる、どのようにして手に入れるなどは全然分からなかった・・・。
「はぁ・・・どうする?熱斗君?」
「いや俺に振るなよ!ってかここにあるのかどうかもわかんねぇよ。あくまで噂なんだし・・・。」
ロックマンも熱斗も色々策を練ったが結局良い案が出てこなかったのかロックマンはフリーズの所へ戻ろうとした。そのとき、ロックマンの目の前に何かが落ちてきた。
「我、『シャドーマン』の弟、『フウマ』である。」
「はい??!!」
「いざ、尋常に勝負!」
いきなりフウマは刀で切りかかって来る。シャドーマンとは昔、戦ったこともあったので太刀筋も読めた。軽く刀を避けると反撃のバスターをお見舞いした。
「ぐぅ!」
フウマにバスターが命中しフウマはその場に倒れた。しかし、すぐに体制を立て直すと呪文を唱え始めた・・・。
「・・・・・・ぶつぶつ・・・・・・。『風魔・豪火弾の術』!」
全ての呪文がいい終わるとフウマの口から大きな火球が発射された。
「ま、まじで?!」
これにはさすがの熱斗も驚く。とりあえずメットガードで回避するが突然、火球が大爆発しロックマンは反対の方向で吹っ飛んでいった。

ロックマン−HP 650/800

「いったぁ〜・・・!」
「・・・・・ぶつぶつ・・・・『風魔・手裏剣』!」
フウマの腕に大きい手裏剣が現れる。フウマはそれをフリーズに向かってなげつける。ひゅんひゅんと風きり音を起こしながらフリーズにぶつかってきた。
「フ、フリーズさ〜ん!!」
「くっ!・・・・・・『アイスソード』!」
フリーズは手から氷の刃を出すと案の定真っ二つに割れる。
「ふーふふふ。なかなかやるな。今日はここまでとしよう。」
そういうとフウマは煙のように消えていった・・・。
「なんだったんでしょうね・・・?」
ロックマンがやっとこさ起き上がろうとしたとき何か妙な音がしたのを感じた。
「これは・・・『セブンスチップ』・・・・・・。ってえぇ!!!」
ゴミのように落ちていたセブンスチップには『ボイスイリュージョン』とかいてあった。
「・・・・な、なんだかあっけないですね・・・。」
こうしてこの街のセブンスチップ探しは終わった。
 
一方、裏インターネット12では・・・。
「このエリアのウィルスは全て排除しました。どうやらここには無いようです。」
「ちっ!ここではなかったか。」
「どうしましょうか。炎山様・・・。」
紅い、いかにも冷酷な瞳を持つナビ、ブルースはその主、炎山に問いかけた・・・。
「まぁ、良い。光達は先に仮想世界へと旅立ったらしい。追いかけたいところもやまやまだがあいにく、セブンスチップはこの裏インターネットにあるらしい。」
「なぜ、炎山様はセブンスチップにこだわるのですか?」
またもや疑問を投げかけたブルースに炎山は冷たい目をぎらつかせて言った。
「ふっ・・・。セブンスチップのありかを知っている奴に聞いた。セブンスチップは太古のチップ・・・。この世の破壊をふせぐべく生まれたという・・・。」
「えっ?!し、しかしネットやパソコンが生まれたのは1990年代と・・・・。」
「あぁ、だが古代には現代とまた違ったパソコンといえるものが在ったのだろうな・・・。」
炎山は歩きながら今までの出来事をブルースに話していく。
「そこで出来たのがセブンスチップ・・・。いやっ、チップではないのかも知れん。まぁ、どっちにしろそんな過去の話は俺にとって関係の無い話だがな。」
ふっ、と冷笑をPET画面に投げかけると炎山は止まっていた足をまた進め始めた。そのとき、目の前に黒い影が出現したと同時に炎山の姿はそこで消えた・・・。
 

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