ロックマン・レボリューション

ゼロさん作

 

〜プロローグ

「・・バトルチップ、ソード、スロットイン」 低く冷たい声がフィールドで響いた。

綾小路スバル―最近、注目されているネットバトラーである。
デジタルフィールド内には、彼のネットナビ―アークが相手のネットナビを冷たく見据えていた。
「・・ひっ」

相手のナビは、パワータイプのようだが、差は圧倒的だ。
完璧にアークの方が数倍勝っている。
「・・行け、アーク。一瞬で決めろ」

「はい、マスター・・」

「くっ、うわああああああっ」

「こら、アイルマン、勝手に・・・っ」
「・・・ばかめ」

第1話−突然の出逢い

はあはあ・・・。
真夏のある日、一人の少年がチップ屋「チロル」を目指して坂道を走っていた。
彼の名は、藤嬢一輝。 星ヶ丘小学校に通う、ごくごく普通の小学生である。 彼が腰につけている「ペット」の中には科学者であり、アメリカの教授をやっている一輝の父が作り出したオリジナルナビ―ヴァン・ロックが飽きれた顔で一輝を見ていた。 「くっそー、完全に遅刻だー。和真怒ってるんだろうなー」
「だから、早く起きればよかったのに」

「うるせーぞ、ヴァンっ!」

「一輝くん、どうしたんですの?」
一輝のクラスメイト、姫百合白雪だった。 かなりの美少女である。
「急いでるから、後でなっ、白雪っ」
「あ、はいっ」
 

一方、チロルでは、一輝の親友である遠藤和真が紅茶を飲んで待っていた。
「遅いなー、一輝」

優雅なお坊ちゃまといった感じを出していて、いかにも美少年と言った感じの少年が和真だ。
「いつものことながら遅いですね」

クールなふいんきをかもしだしている眼鏡の少年、天見タケルがぼやいた。
ここ、チロルはチップ屋でもあり喫茶店でもある。

「わりぃ、遅れたっ」
「あ、きたっ」
 

「一輝、今度のNワンの地区予選に出るんだって本当?」
「うん、出るよ。おもしろそうだし」

楽しそうな表情で一輝が言った。

「へえ、Nワンにでるんだ―」 カランカラン・・。
入ってきたのは、明るい、さわやかな笑顔の綾小路スバルくんだ。

「あっ、あなたは、もしかして、綾小路スバルさんではないですかっ」

いやに緊張した声色だった。

「え、そうだけど・・」
「誰・・?知り合い?」

「ええっ、知らないんですかっ。あの伊集院炎山や光熱斗より上位にいる超有名なネットバトラーですよっ」
ざわざわ。
「・・様だ」
「スバル様だ。本物のスバル様がこんなところにくるなんて・・」

周りにいた一輝の同級生たちが羨望の目でスバルを見た。

第2話

「すげえ、あの炎山より強い奴!?戦ってみてえ」
自分より強いネットバトラーが目の前に現れて一輝ははしゃいでるようだ。
「やまときなよー、一輝ー」

興奮すると周りが見えなくなる一輝を心配して和真が一輝の肩をそっと手を置こうした。

―が、
「綾小路スバル!オレと戦え!」

店のオーナーに紅茶を注文している途中のスバルに向かって一輝はビッと指を指し、名指しした。
「え?君と?」

スバルはいきなりのバトルの申し込みに吃驚とした表情になった。
「一輝くん、いきなりだなあ」
金髪のロンゲ頭の青年、西条惣一郎は軽く笑いながら言った。
「チロル」のオーナーだ。

「おい、待てよ、チビ。スバル様に勝負をふっかけるとはいい度胸じゃねえか」
鋭い目つきでバンダナを頭に括り付けた不良っぽい少年、岩倉俊通が一輝の前に現れた。スバルの手下的存在だ。
「スバル様とバトルする前にオレと戦ってもらおうか」
「俊通、戦うの好きだなあ」

あははっ。

「なんで・・?オレ、お前とは戦うつもりはねえけど」
「スバル様とネットバトルするにはまずオレを倒してからなんだよ」
「・・ふーん。じゃあ、戦う」

「一輝!?」
タケルと和真の声がはもった。
「あーあ・・」

ヴァンロックのあきれた声がペット内で響いた。

「じゃあ、いつやる?」
「そうだなあ、今日はオレ様も用事あるし、明日の夕方にまたここに来い。ここの「スタジアム」でぶっつぶしてやるよ」
「おおっ、わかったっ!明日か」

「一輝くん、盛り上がってるね」
和真とヴァンがハモリながら言った。

「ばっかじゃないの、あんた!!」
一輝のおさなじみで委員長を勤める如月ノエルが、得意げに話す一輝にそう言って、朝の教室で迎えた。 彼女もネットバトラーである。

「・・な、何だよ・・」
「よりによって、あの岩倉とバトルしようとするなんてっ。あいかわらず、バカなんだから」

「まあまあ、ノエルさん、押さえて・・」

―気持ちはわかるが・・。
「あ、タケルくんか」
「一輝、岩倉の実力、大体しってんの?」
「え、それは知らないけど・・」
「スバル様の配下では一番下の実力らしいわ・・。それでも、一輝よりは数倍強いのよ。この前の地区予選総なめだったんだから」

「・・へー、そうなんだ・・。いっがいー」
一輝は感心まじりに言ったので、ノエルは大きくため息をついた。

「・・戦う相手くらい、調べなさいよ」
「・・・。別に調べなくていいよ、オレはどんな奴でもヴァンと一緒に戦うだけだもん」
「一輝くん」
ヴァンがジーンとなった。
 

同時刻、この町に遊びに来た光熱斗は「チロル」である試合を眺めていた。
「・・すげえ」
勝者となったある少女の姿とそのネットナビを見つめていた。

数秒の間に相手はこの少女によって倒された。

尖がった頭に、相手を寄せ付けないクールな態度。
小学生とは思えない大人っぽいふいんきを漂わせている。
ガチャ・・。

「・・あ」
彼女がトレーニングルームから出てきた。

熱斗は、彼女と目が合った。

「・・・・」
彼女の名は、本宮咲耶。
スバルのイトコで、ネットバトラーである。
「・・・あの」
熱斗の顔が赤くなった。
   

「―ひぃぃ、やめてくれ・・」
スバルが率いる四天王の手下によって次々とネットナビが消えて行く。
わずかな暗闇のなか、2階にたたずむ4人が静かにその光景をみつめる。ここは、彼らが良く現れる廃墟で、工場跡だ。
「そういえば、そろそろ行かないと行けないんじゃないか、俊道」
「ああ」
一番右にいるのが、四天王のリーダー、カイ。
一番左にいるのが紅一点の織原流音。
そして、俊道。
最後に、中国人とのハーフの李零蘭。
彼らは、スバルに忠実なグループであった。
「じゃ、行ってくる」
「・・あ、スバル様」
「え、スバル様?なぜ、ここに?」
「いや、ここの近くをたまたま通っただけだから」
ニッコリ。

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